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プラスチックフィルムの基礎と応用

 プラスチックフィルムは、日常生活に欠かせない資材となっており、フィルムが使われている分野は多岐にわたって いる。それだけにフィルムの種類は多く、用途に応じた性能や機能性が要求され、使われる材料や作り方に工夫がなされている。また、フィルムは二次元の製品 であるため、フィルムが持つバルクの特性だけでなく表面からくる特性が重要で、その両者の特性を制御することにより幅広い種類のフィルムが作られる。

 これまで原反メーカーに一任されてきたフィルム開発が、コンバーター、ユーザーを巻き込んだより高次なものにシ フトしつつある。この背景には、汎用フィルムあるいは定番フィルムから、よりマーケットを絞り込んだ高付加価値フィルム開発へ要請が高まっている。あるい は構造や表面設計からアプローチすることで後工程を不要とする高機能フィルムが生みだせるなど、極めて今日的なニーズが潜んでいる。こうした潮流に棹さす には、これまで原反の1つとして位置付けられてきたプラスチックフィルムについて、正しい専門知識を身につけることが肝要とされている。そこでプラスチッ クフィルム(Plastic Film)の基礎について本書を出版することになった。フィルムについて経験のない新入社員や、分野の違う部署で活躍されフィルムにあまり縁のない方々、 あるいはこれからフィルムの勉強をしてみたいと考えている人を対象に、できるだけ平易な内容を提供できるよう心がけてみた。プラスチックフィルムは日常生 活のどの場面でも使われている欠かせない資材となっているが、その素材や、作り方、特性を少しでも知ることができれば、フィルムに対する理解はさらに深ま るものと思われる。

 フィルムの理解は、3P(Polymer & Processing・Product)の理解でもある。Polymerは広義に材料全般(添加剤も含めて)を表す。Processingは成形加工であ り、二次元の形にするだけでなく、表面処理などの後加工も含まれる。Productはフィルム製品の意味である。したがって、どんな材料で、どんな作り方 で、どんな特徴のあるフィルムかの3者の繋がりを理解することが大切である。Productには必ず要求品質があり、性能(Performance)や均 一性(Uniformity)にそれぞれ目標値がある。それを達成するためには、PolymerやProcessingを選択し、目標値に近づくための研 究や開発がなされる。3Pというこの3者の関係を繋ぐのが、構造と物性の解析であり評価である。物性が発現している基本となる微細構造はどんなものか、ま た、どんな構造に仕上げれば、この物性が発現するのか、など物性と構造パラメーターの関係をある程度つかめるようになれば、他の材料(Polymer)に 変わっても基本的な考え方は適用でき、応用展開の幅が広がるものと思われる。

 本書は、先ずPolymerやProcessingについての基本的なことを説明し、Productに関しては 実例をいくつか挙げながら構造的な知見も入れて解説を行う形になっている。プラスチックフィルムを取り扱っているあるいは関係している業種は非常に多く、 原材料を提供する川上から応用製品を作る川下まで極めて多くの人がフィルムに関わっている。また、職種はフィルムメーカー1つ取っても研究開発、製造、営 業などさまざまで、食品、医薬品、化粧品などの最終製品を作るメーカーなどにもそれぞれのフィルムに関わった職種がある。どんな業種、職種であろうとも、 それぞれの立場において扱っている資材の理解が必要で、それが安全、安心、快適な製品提供につながるものと思われる。

 本書は、2005年11月から2008年7月にわたって月刊「コンバーテック」に、「フィルムの初級講座」とし て連載したものを加筆修正し、再編集したものである。連載にあたり、編集部からは、「新入社員や、これからフィルムの仕事を始めようとする人、また営業マ ンを対象にしたわかりやすい内容」という注文があり、専門的なことは極力避けるように努めた。しかし、項目によってはフィルム成形での現象をよりよく理解 していただくために、数式を用いたり、専門用語を使ったりして、難解な説明になってしまったところもあるが、ご了承願いたい。本書がフィルムについての初 心者だけでなく、フィルムの仕事に経験が深い人たちにも、改めてフィルムについての知識を確認するなど幅広くお役に立てれば幸いである。

(著者序文より)



第1章 プラスチックとプラスチックフィルム

1. プラスチック

2. プラスチックフィルム

 

第2章 プラスチックフィルムの原材料と種類

1. 高分子と高分子重合

2. ホモポリマーと共重合ポリマー

3. 高分子の基本構造と種類

 

第3章 プラスチックフィルムの素材各論

1. ポリオレフィン系樹脂

 1.1 ポリエチレン

 1.2 リニアローデンシティポリエチレン

 1.3 エチレンコポリマー

 1.4 ポリプロピレン

2. ポリエステル系樹脂

 2.1 ポリエチレンテレフタレート

 2.2 ポリエチレンテレフタレート共重合体

 2.3 ポリエチレンナフタレート

 2.4 全芳香族ポリエステル

3. ポリアミド系樹脂

 3.1 ナイロン6

 3.2 MXD-6

 3.3 全芳香族ポリアミド

4. その他の樹脂

 4.1 ポリスチレン

 4.2 ポリ塩化ビニル

 4.3 ポリ塩化ビニリデン

 4.4 ポリビニルアルコール

 4.5 エチレン・ビニル・アルコールコポリマー

 4.6 ポリカーボネート

 4.7 ポリフェニレンサルファイド

 4.8 ポリイミド

 4.9 光学用途に使われる樹脂

 4.10 その他

 

第4章 プラスチックフィルムの製造法とフィルムの特性

1. 製膜方法

2. 溶融押出法

 2.1 Tダイ法

 2.2 丸ダイ法

 2.3 共押出多層ダイ

 2.4 チルローラーへの密着性

3. 溶液法

4. 特殊製膜法

 4.1 カレンダー法

 4.2 真空蒸着法

5. 延伸方法

 5.1 フラット法延伸

 5.2 チューブラー法延伸

6. フィルムの特性と用途

 6.1 フィルムの略号

 6.2 未延伸フィルムと延伸フィルム

 6.3 フィルムの用途とフィルムの種類

 6.4 フィルムの組み合わせと用途

 

第5章 フィルム成形におけるレオロジー

1. レオロジーの基礎

2. せん断流動と伸長流動

3. せん断流動とせん断流動不安定性

4. 伸長流動と伸長流動不安定性

5. 高分子流体の緩和時間

 

第6章 ドローレゾナンス現象とフィルム化技術

1. ドローレゾナンス現象

2. ニュートン流体のドローレゾナンス現象

 2.1 ドローレゾナンスの理論解析

 2.2 ドローレゾナンス波形の側面図

3. 非ニュートン流体のドローレゾナンス現象

 3.1 指数法則流体のドローレゾナンス現象

 3.2 粘弾性流体のドローレゾナンス現象

4. エアギャップ長と等温系プロセス

5. ドローレゾナンス現象の発生機構

6. ドローレゾナンス現象発生の低減策

 

第7章 フィルム化プロセスにおける

    外乱とフィルムの均一性

1. 外乱の種類とフィルムの品質

2. ダイス出口の溶融体張力と外乱応答性

3. 外乱過渡応答性とフィルムの厚み変動

 3.1 外乱過渡応答性解析

 3.2 周期的外乱によるフィルムの厚み変動

 

第8章 延伸過程における現象と延伸条件の適正化

1. ボーイング現象とフィルム幅方向均一性

 1.1 延伸工程とボーイング現象

 1.2 ボーイング現象とフィルムの内部構造

 1.3 ボーイング現象と実用特性

2. 逐次二軸延伸挙動とフィルムの高次構造

 2.1 一軸延伸における延伸挙動と構造

 2.2 高分子構造とフィルムの構造

 2.3 小角光散乱法(SALS)と高次構造

 2.4 高次構造シミュレーション

 2.5 逐次二軸延伸挙動と構造変化

 2.6 多段延伸における延伸挙動と構造変化

 

第9章 フィルムの表面制御と機能化

1. フィルムの表面

 1.1 表面からくる特性

 1.2 表面加工技術

 1.3 表面構造の観察

 1.4 PETフィルムの表面構造

2. 表面制御技術

 2.1 無機粒子を用いた表面制御

  2.1.1 ポリマーに無機粒子を添加

  2.1.2 共押出スキン層に無機粒子添加

  2.1.3 コーティング層に無機粒子添加

 2.2 コロナ処理、火炎処理による表面制御

 2.3 無機酸化物コートによる表面制御など

 

第10章 ガスバリア機能の付与技術

1. ガスバリア特性とフィルムの構造

2. ガスバリア機能を付与する方法

 2.1 コーティングによる方法

 2.2 共押出法による方法

 2.3 ナノコンポジットによる方法

 2.4 無機酸化物層による方法

 

第11章 フィルムの界面制御技術

1. フィルムにおける界面

2. 合成紙における界面

 2.1 合成紙の種類と製造法

 2.2 ボイド含有フィルム

 2.3 ボイド発現のシミュレーション

 2.4 ボイド含有フィルムの特徴と応用例

 

第12章フィルムの内部構造と物性発現

1. 構造と物性の関係

2. 透湿性ポリウレタン膜

 2.1 ポリウレタンの基本化学構造

 2.2 応力〜ひずみ関係

 2.3 ハードセグメントの凝集性と透湿性の関係

 2.4 ソフトセグメントの構造と透湿性の関係

3. ポリウレタン膜のゴム弾性特性

 3.1 理想ゴム弾性へのアプローチ

 3.2 低温弾性回復特性

4. 射出成形品の内部構造と物性

 4.1 表層・内層部のフィルム化による評価

 4.2 厚み方向の構造・物性差

 4.3 射出成形条件と構造・物性

5. 熱可塑性ポリエステルエラストマーフィ ルム

 5.1 熱可塑性ポリエステルエラストマーの化学構造

 5.2 組成比率の違いによる構造・物性

 5.3 延伸による構造変化

6. ポリエステルフィルムの延伸発熱と構造

 6.1 ポリブチレンテレフタレートのネッキ

    ングと延伸発熱挙動

 6.2 PBT射出成型品およびその厚さ方向の表層・内層のネッキングと延伸発熱挙動

 6.3 溶融プレスフィルムのネッキングと延伸発熱挙動

 6.4 一軸延伸フィルムのネッキングと延伸発熱挙動

7. プラスチックフィルムのネッキング挙動と理論解析

 7.1 ネッキングおよびネック伝播

 7.2 有限要素法による変形解析

 7.3 ネック伝播の変形状態

 7.4 ネック伝播と荷重〜変位関係

7.5 PETフィルムのネック伝播挙動

  7.5.1 PETフィルムの変形速度依存性

  7.5.2 数値解析による荷重〜変位線図

8. ポリマーブレンドによるフィルムの機能化と構造

 8.1 熱収縮フィルムにおけるブレンド効果

 8.2 ポリマーブレンドによるナイロン6フィルムの機能化

価格 : 5,500円(税込)
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