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入門 ウェブハンドリング

  ロール・トゥ・ロールのプロセス加工において、搬送、巻出、スリット/巻取等に関連する「ウェブハンドリング」技術は、今日、太陽光発電パネル、フレキシ ブルディスプレイ、二次電池をはじめとする花形産業の根幹を支える技術となっています。また、近未来に爆発的な市場形成が期待されるプリンタブル・エレク トロニクスでは、量産化の重要なカギとされています。
 反面、ウェブハンドリング技術は、プラスチックフィルム、金属箔、鋼板、炭素繊維複合材、 繊維、不織布、合成紙、紙・板紙などのウェブをベースに生み出されるコンバーティング製品の良否を最終決定する重要技術でありながら、コーティング、ラミ ネーティング、プリンティング、乾燥・硬化などに比べ、未だなお理論解明の途上にあるため、一部の関係者を除き、その要素技術、理論的アプローチへの理解 度が低いという課題が指摘されています。これが日本の産業力衰退にもつながっています。
 こうした中、小社では、2008年4月、ウェブハンドリ ングの研究分野で世界的な第一人者とされる東海大学の橋本 巨教授にお願いし、世界で初めてのウェブハンドリングに関する専門書『ウェブハンドリングの基 礎理論と応用』を刊行しました。これにより、ウェブハンドリング工程中で生じるシワやスリップなどのウェブ欠陥に対する勘と経験からの対処から、発生メカ ニズムを理解し、より理論的にアプローチすることが可能となり、生産性の向上、歩留まり改善、革新的生産システム構築への道が拓けたとの高い評価を得てい ます。
 一方で、初心者が理解するにはハードルが高すぎるとの指摘がありました。また、橋本教授からは、「日本の産業力を強化するには、ウェブハ ンドリングを理解する人々の裾野を拡げる必要がる。そうした方を対象とした書籍が必要では」とのアドバイスもあり、今回、ウェブの力学的性質、ウェブハン ドリングのトライボロジーという基礎編、さらには、ウェブの巻取問題、張力制御、ローラによるウェブの分離・拡張メカニズムという実践応用編の2部から成 る「入門 ウェブハンドリング」を刊行しました。 
(以下は、著者序文より。
 最近、毎日のようにも の作り技術における日本の衰退、韓国、台湾、中国など東アジア新興工業国の台頭といった報道が盛んになされており、過度とも受け取れるような危機感が煽り 立てられいる。一方で、JAXAを中心に進められた“はやぶさ”プロジェクトの大成功のように、日本の突出した科学技術力を実証した事例もいささかの感傷 的な内容も含めて盛んに報道されている。いずれもそれなりに根拠のある話ではあるが、日本の科学技術力は未だ世界トップクラスの位置にあることに変わりは なく、今後とも不断の努力を怠ることさえなければ、そう簡単に衰退などしないのだということは断言できる。要するに、「ウサギとカメ」の故事をゆめゆめ忘 れぬことが肝要であろう。
 さて、いきなりお説教めいた序文になってしまったが、実は本書の中心テーマである高機能フィルムを対象としたウェブハ ンドリング技術における日本の位置づけが、まことに上に述べた事柄そのものに該当している。例えば、テレビやパソコン用表示装置の中核基材として用いられ る液晶用光学フィルムの製造プロセスはウェブハンドリング技術そのものから成り立っており、そこから生み出される製品の質・量はともに日本が世界を圧倒し ている。この技術においては、今後、さらにプリンティド・エレクトロニクスとの融合化が図られ、電気自動車用電池、太陽光発電、医療用各種フィルムなど多 方面への応用・展開が図られつつあり、日本のお家芸たる技術として将来にわたって不動の地位を占め得るものである。ただし、そのためには、今後、この技術 を発展・展開させる原動力となる若手・中堅技術者の継続的な教育・育成が必要不可欠である。
 本書は、前書「ウェブハンドリングの基礎理論と応 用」の姉妹編として、特に若手・中堅技術者の技術力の底上げを企図した入門書として執筆したものである。幸いなことに前書は多くの読者からの支持を受けた ようであり、生産現場で有効に活用されているという嬉しい報告を数多くいただいている。今後、さらに本書と併せて学ぶことにより、当該分野において一人で も多くの有能な若手・中堅技術者が巣立っていくようならば、著者として、さらには日本人としてこれ以上の喜びはない。


本文サンプルページ(PDF)
【訂正箇所(PDF)

 
 第1章 ウェブハンドリングとは
 1.1 はじめに
 1.2 ウェブとウェブハンドリング
 1.3 ウェブハンドリングの技術上のポイント
 1.4 ウェブハンドリング研究の流れ
 参考文献
 
第2章 ウェブハンドリングの過去・現在・未来
 2.1 はじめに
 2.2 古代の紙造りから抄紙機へ
 2.3 毛筆による書写から印刷機械へ
 2.4 ウェブハンドリング技術の将来
 参考文献
 
第3章 ウェブの力学的性質
 3.1 はじめに
 3.2 ウェブに作用する力と変形
 3.3 フックの法則
 3.4 ウェブ素材の構造と弾性の関係
 3.5 液体の構造と粘性
 3.6 粘弾性体とその力学モデル
 3.7 ウェブの曲げ
 3.8 ウェブの座屈
 3.9 ウェブの折れしわ
 参考文献
 <ウェブの曲げに関する演習問題>
     例題1
     例題2
     例題3
     例題4
     例題5
     例題6
     例題7
     例題8
     例題9
     例題10
 
第4章 ウェブハンドリングのトライボロジー
 4.1 はじめに
 4.2 ウェブ搬送とトライボロジー
 4.3 摩擦力と摩擦係数
 4.4 アモントン-クーロンの摩擦法則
 4.5 摩擦係数の測定
 4.6 オイラーのベルト公式
 4.7 固体の表面粗さ
    (1)接触式粗さ計による方法
    (2)走査型電子顕微鏡による方法
    (3)共焦点レーザ顕微鏡による方法
    (4)走査型トンネル顕微鏡による方法
    (5)原子間力顕微鏡による方法
 4.8 固体の接触と摩擦
 4.9 摩擦のメカニズム
 4.10 摩擦係数のコントロール
 4.11 ウェブとローラ間への空気巻き込み
 4.12 流体の粘性法則
 4.13 流体潤滑の原理
 4.14 レイノルズ方程式
 4.15 フォイル軸受理論
 4.16 ストライベック曲線
 4.17 混合潤滑のモデルと有効摩擦係数
 4.18 マクロスリップの発生条件
 4.19 マクロスリップの抑止方法
 4.20 ウェブの安全搬送線図
 
第5章 ウェブの巻取問題
 5.1 はじめに
 5.2 ウェブの巻取方式
 5.3 ロール内部の応力状態と巻取品質
 5.4 巻取に関する古典的理論モデル
 5.5 巻取ロール内部のヤング率の異方性
 5.6 Hakielの巻取理論
 5.7 数値解法
 5.8 Hakielモデルに基づく計算例
 5.9 空気巻込を考慮したウェブ巻取理論
  5.9.1 ニップロールを使用しない場合
  5.9.2 ニップロールを使用する場合
 5.10 修正Hakielモデルの実験的検証
  5.10.1 試験ウェブの物性値
  5.10.2 巻取ロール内部の半径方向応力
  5.10.3 巻取試験と内部応力の測定結果
 5.11 テーパテンションの利用
 5.12 巻取張力の最適化理論
 5.13 粘弾性巻取理論
 5.14 巻取後の温度変化を考慮した理論
 
第6章 ウェブの張力制御
 6.1 はじめに
 6.2 ウェブ搬送システムと張力制御
 6.3 張力制御のための力学系のモデリング
 6.4 ウェブの張力制御系
 6.5 巻取張力の制御
 
第7章 ローラによるウェブの分離・拡張メカニズム
 7.1 はじめに
 7.2 ウェブの分離・拡張原理
 7.3 ウェブ分離量の理論予測モデル
 7.4 実験的検証
  7.4.1 スリットされたウェブの分離量の測定
  7.4.2 折れしわ防止機能の検証実験
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