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誰でもわかるラミネーティング

 「貼り合わせ」「積層」という訳語が当てられているLaminating(ラミネーティング)。この技術が日本に導入されてから既に40数年が経過しています。そして今、ラミネーティングを含むコンバーティング業界は、まさに世代交代の時を迎えています。頑張って良いものを作りさえすれば売れた長閑(のどか)な時代は終わり、顧客志向を十分に吟味した上で作り込まなければ物が売れない時代を迎えています。

 激しい競争下にあって生き残るには、顧客から選ばれる必要があります。では、何がその決め手となるのでしょうか。価格で無理が利いたり、小ロット対応、小口配送、あるいは短納期に素早く対応できる営業力でしょうか。HACCP(危害分析重要管理点)方式や国際標準化機構のISO 9000シリーズ、PL(製造物責任)法などを含むトータルな意味での品質管理力でしょうか。他社にはない独自な商品を企画し具体化する開発・技術力でしょうか。クレーム処理における迅速な行動力を備えた営業・サービス力でしょうか。環境マネジメントシステムとしてのISO 14001の導入、環境負荷の少ない製品作りを じてのエコロジー社会への参加でしょうか。いずれにしても、できるだけ多くの力を備えるにこしたことはありません。

 顧客から選ばれるかどうかは、実は、顧客に十分満足してもらえる経営資質がその企業に備わっているかどうかにかかっています。つまり、製品やサービスそのものの優れた品質、製品やサービスを作り出す優れた生産工程と手法、製品やサービスを作り出す企業側の人材、営業、企画、開発、技術および生産部門の総合的能力と知識があるかどうかです。時代が激変している時には、手をこま いていては間違いなく立ち遅れてしまいます。これは、コンバーティングの一要素であるラミネーティングについても同様です。「営業担当なので技術のことについては知りません」「今担当している現場のことはわかりますが、他はよくわかりません」という言い訳が じない時代がきたといえるでしょう。

 本書は、1990年1月から97年12月にわたって月刊技術雑誌「コンバーテック」に、「ラミネート初級講座」というタイトルで連載したものを加筆修正し、再編集したものです。連載にあたり、編集部からは、ラミネーティングについて、「新入社員や営業マンを対象としたわかりやすい内容で」という注文があり、技術的に難解な文章は極力避け、平易な文章で表現することに努めました。また当時は、コンバーティングという言葉自体あまりよく知られていませんでしたし、その定義も曖昧なまま使用されていましたので、連載では、日本の状況、技術の拡がりの可能性を考慮し、編集部と協議し、思い切って、「コンバーティングとは、プラスチックフィルムやシート、紙、金属箔、布などの薄物基材に、新たな加工を施し、新たな価値を生み出す行為の総称」と定義しました。今では、誰もが、この定義をもとにコンバーティングという言葉を使用しています。なかには事業部の名称に使っている企業もあり、生みの親としてもうれしい限りです。

 単行本化にあたり、可能な限りわかりやすく、読みやすくという連載時の精神は踏襲したつもりですが、項目によっては難解な説明に終始したところもあります。ご了承下さい。営業サービスや管理業務に携わっている方々、一 社員、入社したての若い人々、そして現場のベテラン陣の方々にとっても、本書がラミネーティングの世界への案内書として少しでもお役に立てれば幸いです。

 1998年9月 松本 宏一




増補版発刊にあたり

 1998年10月に本書の初版を発刊し、2001年3月に第1版2刷を増刷してから、はや5年半が経過しています。幸いにも、可能な限り分かりやすく、読みやすくという視点から編集された本書は、今なお、多くの読者に活用していただいており、誠に感謝にたえません。
 この度、増補版発刊に当たり、今後、ラミネート分野への適用が注目されている生分解性プラスチックについての解説頁を設け、さらに、「乾燥食品」「水物食品」「液体食品」「冷凍食品」「油脂食品」「医薬品」「真空包装」「ガス充填包装」「深絞り包装」「酸素吸収剤包装」「易開封包装」「スタンディングパウチ」「レトルト殺菌包装」「紙容器」「バッグインボックス」「電子レンジ食品包装」「無菌充填包装」「ラミネートチューブ」「その他(滅菌用包装、表 保護フィルム)」の用途 における代表的なラミネート構成を表にまとめ、初版時に足りない点を補足しました。
 本書は、初版時から、現場で役立つ、すぐにでも製品が作れる本としての評価がありますが、単なる便利なHOW-TO本にとどまらず、この本をきっかけとして、コンバーティング、そしてラミネーティングに興味を抱く人が数多く輩出されれば、著者冥利に尽きます。最近は、コンバーターばかりではなく、包材等のユーザーである食品・飲料メーカー、医薬品メーカー、化粧品材料メーカー、工業材・製品メーカー、大学の研究室等も本書の新たな読者に加わってきていると聞きます。これまで専門家に任せていた領域に、直接、ユーザー(企業)が興味を持ち始めた背景には、世界規模で拡がりつつある熾烈な商品開発競争の最中にあっては、モノ作りの原点回帰が必要であり、そのためには細かな専門知識が必要であるとの判断、認識が働いていると思います。その意味では、コンバーター各社も、改めて鉢巻きを締め直す必要があるのかもしれません。その時、本書が傍にあればと願う次第です。

2004年4月松本 宏一



 第1章  コンバーティングとは何か

    1. ラーメンの袋、これもコンバーティング

    2. 新たな加工で、新たな価値を

    3. 様々な業界と関連するコンバーティング

    4. これだけあるコンバーティング技術

    5. いろんな機能を付与するコーティング

    6. ラミネートは「積み重ね」のこと

    7. スリットとカットの違いは

    8. まだまだあるコンバーティング製品

 

第2章  ラミネーティングとは何か

    1. コンバーティングで多用されている技術

    2. ラミネートで不思議な機能を付与

    3. ラミネーターの構成要素

 

第3章  図解で理解する7つのラミネーション法

    1. ラミネーションの種類は

    2. ウェットラミネーション:

        ウイスキーやビールのラベル

    3. ホットメルトラミネーション

        (またはワックスラミネーション):

        キャンディーの包装材料

    4. 押出コーティング・ラミネーション:粉末・顆粒医薬品分包材料

    5. 共押出成形ラミネーション:

        チーズの包装材料

    6. ドライラミネーション:

        レトルト食品包装材料

    7. ノンソルベントラミネーション:

        ポテトチップスの包装材料

    8. サーマルラミネーション:

        湿気取り容器の蓋材

 

第4章  こんなにあるラミネーション用素材−紙・板紙、セロハン、合成紙、不織布、アルミ箔、蒸着フィルム−

    1. 素材の知識も大事です

    2. 紙と板紙

   2.1 どのように作られるの

   2.2 どんな紙がラミネートに使われるの

    3. セロハン

   3.1 どのように作られるの

   3.2 普通セロハンと防湿セロハン

    4. 合成紙

   4.1 紙ライクなフィルム

   4.2 どのように作られるの

    (1)   フィルム法合成紙

    (2)   ファイバー法合成紙

    5. 不織布

   5.1 繊維だが布ではない

   5.2 どのように作られるの

    (1)   湿式法

    (2)   乾式法

   5.3 ウェブの接着方法は

    6. アルミ箔

   6.1 どのように作られるの

   6.2 形状と種類は

    7. 蒸着フィルム

   7.1 アルミ蒸着フィルムにはどんな特徴があるの

   7.2 透明タイプの蒸着フィルム

   7.3 蒸着の原理は

 

第5章  プラスチックとは何か

    1. これがプラスチック

    2. モノマーとポリマー

    3. 原子と分子

    4. ポリエチレンとポリプロピレンはここが違う

    5. 重合体と共重合体の分子配列

    6. 結晶性と非結晶性

    7. 熱可塑性と熱硬化性

 

第6章  プラスチックフィルムの製造法

    1. 溶かして、流して、固める

    2. キャスティング法

    3. カレンダー法

    4. エクストルージョン法

    5. 延伸

 

第7章  ラミネートに使われるプラスチックフィルム

    1. まずは略号だけでも憶えよう

    2. ポリエチレン(PE)フィルム

   2.1 ポリエチレンの種類

   2.2 低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム

   2.3 中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム

   2.4 高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム

   2.5 直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム

   2.6 メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)フィルム

    3. エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム

    4. アイオノマー(IO)フィルム

    5. 無延伸ポリプロピレン(CPPまたはIPP)フィルム

    6. 二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム

    7. ポリアミド(PAまたはNy)フィルム

   7.1 アミンとカルボン酸が結合してナイロンに

   7.2 無延伸ナイロン(CNy)フィルム

   7.3 二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム

    8. ポリエステル(PET)フィルム

    9. ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム

    10. ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム

    11. ポリビニルアルコール(PVA)フィルム

    12. エチレン・ビニルアルコール

        共重合体(EVOH)フィルム

    13. ポリカーボネート(PC)フィルム

    14. ポリスチレン(PS)フィルム・シート

    15. ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)フィルム

    16. 共押出フィルム

    17. コーテッドフィルム

   (1)    水性コーティング

   (2)    溶剤コーティング

   (3)    ホットメルトコーティング

 

第8章  押出コーティング・ラミネーション用樹脂に関する基本用語

    1. 押出コーティング・ラミネーションの概略

    2. これさえわかれば大丈夫

   (1)    密度

   (2)    メルトフローインデックス

   (3)    押出加工適性

   (4)    接着性

   (5)    ヒートシール性

   (6)    低温ヒートシール性

   (7)    夾雑物付着シール性

   (8)    ホットタック性

   (9)    樹脂臭

   (10)    機械適性

   (11)    樹脂交換適性

 

第9章  ラミネートに使われる押出コーティング・ラミネーション用樹脂

    1. もう一度おさらいをしてみよう

    2. ポリエチレン(PE)樹脂

   2.1 低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂

   2.2 高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂

   2.3 直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂

   2.4 メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)樹脂

    3. ポリプロピレン(PP)樹脂

    4. ポリエチレン(PE)共重合体樹脂

   4.1 PEベースの共重合体の仲間

   4.2 エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂

   4.3 アイオノマー(IO)樹脂

   4.4 エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)樹脂

   4.5 エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)樹脂

   4.6 エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)樹脂

   4.7 エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)樹脂

   4.8 エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂

   4.9 エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂

   4.10    エチレン共重合体のまとめ

    5. ポリメチルペンテン(PMP)樹脂

    6. 飽和ポリエステル(PET、PBT)樹脂

 

第10章  機能性付与のかくし味

    1. 添加剤と改質剤

    2. 可塑剤

    3. 熱安定剤

    4. 酸化防止剤

    5. 紫外線吸収剤

    6. 帯電防止剤

    7. 滑剤

    8. 着色剤

    9. 発泡剤

    10. 改質剤

   (1)    ポリブチレン−1

   (2)    ポリオレフィン系改質剤

   (3)    アクリレート系改質剤

 

第11章  接着剤とAC剤

    1. ラミネートで接着機能を向上

    2. 接着と粘着

    3. 接着力と凝集力

    4. 接着の発生

   4.1 濡れ

   4.2 アンカー効果

   4.3 結合

    (1)    化学結合

    (2)    水素結合

    (3)    ファンデルワールス力

   4.4 溶解度パラメーター

    5. 接着剤

   5.1 ウェットラミネーション用接着剤

   5.2 ワックス・ホットメルトラミネーション用接着剤

   5.3 ドライラミネーション用接着剤

   5.4 ノンソルベントラミネーション用接着剤

   5.5 押出コーティング・ラミネーション用AC剤

    (1)    有機チタン系AC剤

    (2)    イソシアネート系AC剤

    (3)    ポリエチレンイミン系AC剤

    (4)    ポリブタジエン系AC剤

 

第12章  ラミネート包装材料の設計

    1. 包装材料に要求される諸性質

   1.1 7つの機能

   1.2 安全・衛生性

    (1)    材質試験

    (2)    溶出試験

    (3)    材質別規格

    (4)    用途別規格

   1.3 保護性

   1.4 作業性

   1.5 便利性

   1.6 商品性

   1.7 経済性

   1.8 廃棄処理・リサイクル性

    2. 生産方式

    3. 包装の役割

    4. 包装設計の考え方

   4.1 顆粒状医薬品

   4.2 削り節(パック削り節)

   4.3 レトルト食品

   4.4 乾燥菓子、スナック菓子

   4.5 スパイス入りスナック菓子

   4.6 緑茶、紅茶

    5. 包装設計の流れは

    6. 包装材料選定の目安

 

第13章  図解でわかる用途別ラミネート構成

    1. 具体例で示しましょう

    2. 乾燥食品包装

    3. 水物食品包装

    4. 液体食品包装

    5. チルド・冷凍食品包装

    6. 油脂食品包装

    7. 医薬品のストリップ包装、分包、PTP包装

    8. 真空包装

    9. ガス充填包装

    10. 深絞り包装

    11. 酸素吸収剤包装

    12. 易開封包装

    13. スタンディングパウチ(自立袋)

    14. レトルト殺菌包装

    15. 紙容器

    16. バッグインボックス(BIB)

    17. 電子レンジ食品包装

    18. 無菌充填包装

    19. 滅菌用包装

    20. ラミネートチューブ

    21. チャック袋

    22. スパウト袋

    23. 表面保護フィルム

    24. その他の包装

 

第14章  ラミネートと関連技術

    1. 印刷

   1.1 印刷はインキで多数複製する技術

   1.2 版の種類は

    (1)    凸版

    (2)    凹版

    (3)    平版

    (4)    孔版

    2. 製版方法

   (1)    凸版

   (2)    凹版

   (3)    平版

   (4)    孔版

    3. グラビア印刷のプロセス

   (1)    企画・デザイン

   (2)    レイアウト

   (3)    版下作成

   (4)    版下の撮影

   (5)    カラー写真原稿の色分解

   (6)    集版

   (7)    校正刷り

   (8)    製版

    4. カラー印刷の原理

   (1)    網点

   (2)    光と色分解

   (3)    インキ

    5. ラミネート後のテクニック

    6. リワインディング

   6.1 これで製品の良し悪しが決まる

   6.2 繰出機

   6.3 巻取機

    (1)    センター・ワインディング

    (2)    サーフェス・ワインディング

    (3)    センター・サーフェス・ワインディング

    7. スリッティング

   (1)    レザーカット

   (2)    シァーカット

   (3)    スコアーカット

    8. 製袋

   (1)    紙袋

   (2)    ポリ袋

   (3)    ベスト袋(U字形袋)

    9. ラミネートフィルム用製袋機

   (1)    三方シール自動製袋機

   (2)    センターシール自動製袋機

   (3)    スタンディングパウチ自動製袋機

    10. 自動充填包装機

   (1)    ピロー型自動充填包装機

   (2)    三方シール充填包装機

   (3)    四方シール充填包装機

 

第15章  フィルム・ラミネート製品の試験法

    1. クレーム防止に役立つ

    2. 試料の採取と測定環境

   (1)    試料の採取

   (2)    試験測定と標準環境

    3. 厚み測定

    4. 引張強度と伸び

    5. 引裂強度

    6. 破裂強さ

    7. 耐折り強さ

    8. 衝撃強さ

    9. 剛性

    10. ブロッキング

    11. カール

    12. 滑り性

    13. 濡れ

    14. 接着強さ

    15. ヒートシール強度

    16. ホットタック性

    17. 透湿度

    18. ガス透過度

    19. 紫外線透過率

    20. 光線透過率とヘイズ

    21. 光沢度

 

資料編

ラミネート構成一覧

 

使える略語(Abbreviation List)&用語索引(Terminology Index)

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